大塚康生氏・特別講義(2009年)・2

大塚康生氏・特別講義(2009年)・2
アニメーションの基本は、やっぱり絵を動かすことなんですよ。
深夜に放映されている作品も含めて、最近のアニメーションを見ていると、いくつか気になることがあります。
美形のキャラクターがたくさん出てきて、とてもカッコイイのですが、あまり動いてないなあと思うんですよ。
とりわけ残念なのが、キャラクターが直立不動で正面を向いたまま、しゃべっているだけの画面作りが多く見られることです。私なんかは「死に体」と呼んでタブー視しているのですが、試しに音声をオフにして見ると、ちょっと見るに堪えないでしょう?
現在、日本のアニメーションは、とても難しい状況にあると思います。製作される本数も、だんだん減ってきていますしね。
先日、台湾に招待されまして、多くの方とお話をする機会を頂いたのですが、内容面でも以前よりも満足のゆく作品が少なくなったと、厳しい指摘を受けましたよ。
そういった状況のあおりを受けて、みなさんは楽には就職できないかもしれません。
でも、アニメーションの基本を身につけていれば大丈夫です。絵を動かすことですね。一枚絵として綺麗に完成させる必要はありません。上手か下手かなんてことも、あまり気にする必要はないんです。ラフの絵で構いませんから、一連の流れになった動きを、短い時間で仕上げることを心がけてください。
例えば子犬がパッと飛び上がった時、体はどんなふうになっているでしょう? 着地した瞬間は、どんな格好をしていますか? 頭ではうまく思い浮かべられないかもしれませんが、一度でも描いたことがあれば、不思議と手は覚えているものなんです。
以前の学生さんには、男の子が手前の箱に上り、奥にある箱に飛び移る動きを描く課題をこなしてもらいました。
箱に上る時の動作、これは難しいですよね。男の子の足が、なかなかスッと上がらないんです。力を込めて飛ぼうとする時の格好や、空中での姿勢をどう描くかという問題もあります。
もちろん、最初から上手く描ける人ばかりではありません。四苦八苦した方も多かったと思いますが、最後にはほとんどの方が、無事に仕上げることが出来ました。上手な人の作品を見て、自分もこんなふうに描いてみようと考えながら、日々進歩していたからなんですね。
学校にいるからといって、何も先生だけから教わるというわけではありません。周囲から受ける影響には、言い尽くせないほど大きなものがあります。技術というのは、互いに高め合いながら成長してゆくものなんです。
今のアニメーションの現場を考えた時、この人間関係が希薄になっていることも気になるんですよ。上手な人の影響を受けて腕を上げることが、昔よりも難しくなっているんです。
幸い、皆さんには高め合ってゆける素晴らしい仲間がいるわけですから、どうか大切にしてください。
(編集構成:本川耕平)
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