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大塚康生氏・特別講義(2009年)・4


大塚康生氏・特別講義(2009年)・4

 アニメーションの本質は、やはり絵だと思うんです。
 石膏デッサンをする時なんかも、ただ一方向から描くだけではなく、アングルを変えながら形をつかむことを心がけてほしいものです。そうすると、「ああ、そうなんだ」と絶えず発見があるでしょう? 発見があれば、表現の間口も広がって、手を動かしているうちに描くことが面白くなってくるはずなんですよ。
 私が教えていた生徒さんの描いた、ピンポン球が弾むアニメーションを見てもらいましょうか。この方は、ピンポン球を弾ませる音がうるさいと苦情が来るほど、熱心に対象を観察していました。自分ならこう描くと、同じ対象で別の動画を作ってきた方もいましたね。先生だけでなく、仲間からも影響を受けて学んでいたわけです。
 旗が風になびく様子や三次元空間で粉砕される石など、生徒さんには様々な課題をこなしてもらいました。
 ご覧になってもらえればわかるように、水のスプラッシュなんかはCGでも上手く動かすことが難しいのに、よく描けていますよね。炎を描いてもらった時は、燃え方の原理だけ教えて、後は自由に表現してもらいました。
 極めて密度の高いディズニーの原画を、中割りしてもらう課題も出しました。中割りだけでもこれだけの個人差が出ますから、見ていて面白いでしょう?

 その教室には、貞本義行さんという大変上手な方がいましてね。貞本さんを中心に、各自が努力を重ね、メキメキと腕を上げてゆきました。
 その貞本さんや、かつて東映動画で「諸君、脱帽したまえ」と同僚に紹介された新人宮崎駿氏(現監督)のように、アニメーションの現場には独特の個性を持った方が集まっています。スタッフ一人一人の個性を生かさなければ作品は面白くならないですし、誰かが中心となり、それぞれが苦労を分け合う形で完成させてゆくのが、アニメーションのいわば宿命とも言えるのです。

 現場に出ると色々と大変な思いをさせられますが、絵を動かすための基礎を身につけ、そのうえで自分の個性を表現できるようになれば、いつだって仕事はあるものです。努力していれば結果は後からついてくるんですから、何も心配することはありません。
 遊ぶことも大切ですが、やっぱり一生懸命に勉強してほしいですよね。好きな仕事に就けるということは、苦労があっても幸せなことなんですから。
 学校に通っているからと安心して、受動的に教わるだけではダメですよ。常に自分から学ぶ姿勢を持っていてください。
 見たり聞いたりして覚えるだけでなく、手に覚えさせてください。若い頃の理解力や吸収力というのは、素晴らしいものです。若さにはたくさんの可能性がありますから、それを信じて頑張ってください。
 たとえ今は描くことが苦手でも、努力をすれば必ず克服することができます。
 皆さんが、日本のアニメーションの活力を復活させる存在になってくれることを、心から願っています。 (終)


(編集構成:本川耕平)
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