東映アニメーション研究所

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堀江美都子氏 特別講義(2009年)・3


堀江美都子氏 特別講義(2009年)・3

 たくさん歌わせてもらうのはありがたいことなのですが、仕事が増えてゆくにつれて、自分の中に迷いが生じてきました。「私は普通の歌手とは違うんだろうか?」という疑問を抱くようになったんですね。
 もやもやした気持ちを整理できないまま、数年間くすぶり続けていた時に出会ったのが、『キャンディ・キャンディ』という作品です。
 『キャンディ・キャンディ』のヒットをきっかけに、自分自身の歩む道をしっかりと見すえるようになりました。
 その時はちょうど浪人生で、大学に進むべきかどうか決めかねていたんです。勉強ではなく歌うこと一本に打ち込もう、これからは真のプロ意識を持って歌を届けてゆこうと、決心することが出来たのは『キャンディ・キャンディ』のおかげです。

 世の中はちょうど第一次アニメブームで、それまで蓄積されてきた作り手さんやファンの皆さんの情熱が、一気に爆発した時期でした。
 ですから私も、そういった方々に押し上げてもらった形になりますね。ずっと抱いていた疑問が全て解決するほど、歌だけではない色々な仕事をさせてもらうようになりました。
 本を書き、ミュージカルに出演し、ラジオのディスクジョッキーになって、オリジナルアルバムも発表しました。間口が広がったというか、様々な切り口から自分を見てもらえるようになったんですね。
 もちろん嬉しかったですが、仕事としての厳しさは格段にアップしました。どんな仕事でも同じだと思うのですが、いわゆる下積みと呼ばれる時期の方が楽ではあるんです。一人前として認められた後は、結果だけでしか評価されず、失敗が許されなくなりますから。
 たから一人前になるまでは、たくさん失敗した方がいいんですよ。一度でも失敗したことは、絶対に忘れないじゃないですか。困難からうまくすり抜けたって、いつか忘れて、同じ過ちを繰り返すだけなんです。

 認められた反面つらいことも多かったですけれど、私はもともと負けず嫌いなんです。それに、新しいことにチャレンジするのが好きなんですね。いつでも経験のないことに取り組みたい、未知の現場に飛び込みたいと思っています。
 ぬるま湯につかっていることが出来ない性格なのかもしれませんね。一つの仕事に慣れてくると、「このままじゃダメだ!」という気持ちが必ず湧き起こってくるんです。
 声優の仕事に挑戦しようと決めたのも、そういった気持ちを常日頃から持っていたからです。主題歌を歌うと同時にヒロインを演じるという話を頂いて、チャレンジしてみようとました。今でこそ声優を売り出す一つの形のようになっていますが、当時は誰もやったことがない方法でしたしね。
 でも、アフレコのマイクの前に立ったことさえなかったのに、いきなり現場に放り込まれたわけですから、それは苦労をしましたよ。
 
(編集構成:本川耕平)
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